-
やさしくなりたい 02
¥1,320
発行人である野地洋介の心臓発作の経験から生まれた「身体との付き合い方」をテーマにしたZINEの第2号。能町みね子さんや古谷経衡さんなど文筆家の方々によるエッセイと、尾崎世界観さんや藤原辰史さんへのインタビューなどを収録。 編集:野地洋介 1992年生まれ。編集者・ライター。『やさしくなりたい』発行人。出版社やインターネットサービス運営の会社を経て、現在はWebメディアの編集を行う傍ら、大学院にて医療人類学の分野で研究を行う。 表紙イラスト:nico ito デザイン:清水藍 印刷:株式会社イ二ュニック 2021年4月10日発売予定 本体価格:1200円(+税) B5変形(182mm×182mm) / 本文80ページ ■目次 02|はじめに 06|能町みね子:改造ボディを乗りこなせ 12|尾崎世界観インタビュー:音楽を続けるために、音楽から離れる(聞き手・文:野地洋介) 22|古谷経衡:わからないから想像する。パニック障害への無理解を越えて 30|みんなのセルフケア 36|生湯葉シホ:透明な狂犬のかたちをした私の不安 42|郡司ペギオ幸夫インタビュー:不確実性に満ちた身体を感じるための「装置」をつくる(聞き手・野地洋介 構成:生湯葉シホ) 54|和島香太郎:映画とてんかんの日々 60|藤原辰史インタビュー:よそ者と生きる ーー世界と身体の豊かな関係性(聞き手・文:野地洋介) 70|野地洋介:Editor's note 応答の過程で 74|宮崎智之:セルフモニタリングとしての読書 80|編集後記 ■はじめに 今も続く新型コロナウイルスの影響は、東京の片隅で暮らす僕のもとにも、やはり意外な形であらわれた。 時はさかのぼり、まだ大学生だったときのこと、僕は友人と訪れたラーメン屋で大盛りのつけ麺を頼んだ。食べざかりのハタチ前後、大盛りが無料であればそれを頼まない理由はなかったからだ。しかし、目の前に置かれたそのどんぶりには、予想の3倍を遥かに超えるかという物量の麺が鎮座していた。余裕綽々の面持ちで頼んだ手前、残すなどという選択肢は残されていない。謎のプライドに突き動かされた僕は無理やり食べきり、その直後、友人の前で盛大にリバースした。 あまりに間抜けな話だが、その日からしばらく、僕は他者の視線を意識すると、突然吐き気がこみ上げてくるという発作にも似た症状に襲われるようになった。 パンデミックで変わったことの一つに、取材や打ち合わせの方法がある。当然、これまでは対面で行うことのほうが圧倒的に多かったが、感染拡大により、ほどなくしてZOOMなどのビデオ会議方式に移行した。 これがどうやら自分の発作出現の条件にピタリと合致したらしい。もう何年もご無沙汰だったというのに、ZOOM で取材を行っていると、突然吐き気がこみ上げ、画面ではなく身体がフリーズしてしまうという状況がしばしば生まれたのだ。 ZOOM などのビデオ会議ツールは、話し手と聞き手を明確に分離するため、おそらくリアルで話しているときよりも、僕に他者の視線を強く意識させたことが原因なのだろう。まさかこんな形で影響を被るとは思いもよらなかったが、ことほどさように身体はままならない(現在は慣れたのか解消された)。 そういうわけで(?)前号に引き続き、本誌は「ままならない身体」とのそれぞれ異なる付き合い方や考え方を探っていく。そのことが、孤独に自身の身体と格闘している方に何かしらヒントを与えると同時に、異なる身体を持つ他者への想像力を育む一助になると願って。 ■一部抜粋 こうして病院にバンバン身を任せ、改造しまくって生きていることにはけっこう誇りを持っています。なかなか人が経験できないことをしているわけだからね。(能町みね子) まず「歌えない」ということにぶつかることから始めて、徐々になじませていく。できないことを受け入れたら、そこから少しずつできることが出てくるので、毎回その繰り返しですね。(尾崎世界観) 私の体が急変したのは、実にこの98年の冬の事であった。それは体育館での全校集会中に突然やってきた。硬いはずの床がまるで豆腐のようにぐにゃりと変形し、ある種の鉱石に方位磁針を近づけるとぐるぐると針が回るように、平衡感覚がなくなる。(古谷経衡) 人の言葉をよく聞く、というと当たり前すぎて笑われてしまいそうだけれど、社交不安、特に私のような視線恐怖の症状は、自分の創りだした架空の他者に飲み込まれることで起きる病気だと私は解釈している。(生湯葉シホ) 真っ白い紙だからこそ、なにかが書かれるように、意味を失った場所にこそ、外部が召喚される。空虚な、意味を脱色されたギャップこそ、書き割り化したアンチノミーだったのです。(郡司ペギオ幸夫) リスクと対処法を事前に伝えておくことにより、一人で抱え込んでいた不安が分散できたような感覚があった。病名を明かさずに撮影を行っていた頃は、日を追うごとに精神的な疲労が蓄積し、眠りに就くことさえ怖かった。(和島香太郎) 私はアフターやメンテナンスに価値を置く社会の方がみんな楽になると思うし、「傷」「欠損」を愛でる修理の美学的な発想も育ってくると思います。(藤原辰史) 本はいざとなると僕に対して白々しくなり、そっぽを向いてしまう他人のような存在なのだろうか。読書は、あくまで平時の暇な時期にするものであり、人生とは無縁のものなのだろうか。断じてそうでないと、僕は思っている。(宮崎智之) ■諸注意 ・作業は全て一人で行っております。発送まで7日前後お時間いただく可能性がありますので、あらかじめご了承くださいませ(なるべくお待たせしないよう頑張ります)。 ■取り扱い店舗(在庫状況は各店舗にお問い合わせください) ・本屋 Title(東京・荻窪) ・本屋B&B(東京・下北沢) ・SPBS(東京・渋谷) ・ジュンク堂書店 池袋本店(東京・池袋) ・ポルベニールブックストア(鎌倉) ・本屋lighthouse(千葉) ・ON READING(愛知) ・恵文社一乗寺店(京都) ・ホホホ座 浄土寺店(京都) ・ViVO,VA(神戸) ・乃帆書房(秋田) ・栞日(長野) ・loneliness books(オンライン) ※お取り扱いをご希望の方は、Contactよりお問い合わせくださいませ。
-
やさしくなりたい 01
¥880
SOLD OUT
自身が死にかけた経験から生まれた「身体との付き合い方」をテーマにしたZINEです。ラッパーやライターによる6本のエッセイほか、ミュージシャンや医師へのインタビューや身体との付き合い方を集めたアンケートページを収録。 編集:野地洋介 編集者・ライター。大学卒業後、出版社勤務などを経て、現在はWebメディアの編集をおこなう。2018年12月、自宅にて心臓発作を起こして緊急搬送。4ヶ月の治療を経て社会復帰するも、これまでと全く世界の見え方が変わり、本誌の制作をスタート。 表紙イラスト:たなかみさき デザイン:清水藍 印刷:株式会社イ二ュニック 2020年4月5日発売 本体価格:800円(+税) B5変形(182mm×182mm) / 全78ページ ■目次 はじめに ダースレイダー |全ては流れ 稲葉俊郎(インタビュー)|からだの内側に基準をつくる 武田 俊|これがスーパーパワーかは、知らないけれど 豆塚エリ|甘えることは悪ですか? みんなのからだ 吉川ばんび|強くて丈夫なふりをしつづけた、弱いからだ 下岡 晃(インタビュー)|「みんな違う」が当たり前。どこまでいっても足りないけど想像してみること 野地洋介|仰向けで寝る 宮崎智之|わからないだらけの世界で生きている 編集後記 ■はじめに 1年半ほど前、心臓発作により緊急入院することになった。幸い、数ヶ月の治療を経て退院できたが、ほどなくして移動中の電車内で「また発作が起きたらどうしよう」と恐怖が爆発。思わずしゃがみ込み、意識が遠のいていく間、傍から見ればどう見ても健康体の自分がいきなりガタガタと震えている姿を想像し、初めて目には見えない身体的な「不安」を抱え込んでいる人たちの存在に思い至った。 そんな状態にまでならないと気付けないのかと自分でも呆れるのだが、そんなわけで雑誌を立ち上げた。もちろん、テーマは「身体」。 日々特段の不自由もなく生活をしていると、みんな同じような身体的条件を与えられていると錯覚してしまう。しかし、それは見えないだけ。本来身体とは一人ひとり異なるものだ。 しかも、それぞれの身体は自分の意思でコントロールすることなど到底不可能。いわば、最も身近な「他者」とでも言える存在が、自らの身体なのではないかと思う。 本誌では、そんな「ままならない身体」とのそれぞれ異なる付き合い方や考え方を探っていくことを通して、孤独に自身の身体と格闘している方に何かしらヒントを与えると同時に、異なる身体を持つ他者への想像力を持てるようになることを目指す。 ■取り扱い店舗さま ・本屋 Title(荻窪) ・ジュンク堂書店 池袋本店(池袋) ・SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS(渋谷) ・下北沢B&B(下北沢) ・ブックギャラリーポポタム(西池袋) ・PEOPLE BOOKSTORE(茨城県つくば市) ・誠光社(京都市上京区) ・恵文社一乗寺店(京都市左京区) ・ON READING(愛知県名古屋市) ・乃帆書房(秋田県秋田市大町) ・書林シイとナラ(長野県伊那市) ・loneliness books(オンライン) ※版元在庫は全てなくなり、今のところ増刷の予定もございません。お求めの方は各お取り扱い書店でお探し下さいませ